成果を生む能力：コンピテンシーとは

成果を生む能力：コンピテンシーとは

仕事で成果を出す人の行動

仕事で良い結果を出す人には、共通の行動のくせがあります。それは、ただ知識や技術を持っているだけでは説明できません。優れた社員は、どのような考えで仕事に取り組み、どのような場面でどのように行動しているのでしょうか。これらの思考や行動を調べ、言葉で表したものが「行動特性モデル」と呼ばれています。このモデルは、人材育成や評価に役立てられています。つまり、良い結果を出すために必要なのは、単なる知識や技術ではなく、実際にどう行動するのかという特性なのです。

良い結果を出すには、たくさんの知識や高い技術を持っているだけでは足りません。知識や技術をうまく使うための行動のくせ、つまりどのように行動するかが大切になります。例えば、難しい問題にぶつかった時、諦めずに粘り強く取り組む力、周りの人と協力して解決方法を探す力、新しい情報や技術を積極的に学ぶ姿勢なども、行動特性に含まれます。

これらの行動特性は「できる力」とも言えます。物事を成し遂げるには、計画を立て、実行し、うまくいかない時は原因を分析し、改善策を考え、再び実行するという一連の流れが必要です。計画を立てる力、実行する力、分析する力、改善する力、これらは全て「できる力」です。また、目標達成に困難が伴う場合は、強い意志を持ってやり抜く力も必要です。さらに、周りの人を巻き込み、協力して仕事を進める力も重要になります。良い人間関係を築き、信頼関係を深めることで、協力体制がより強固なものになります。

これらの行動特性を身につけることで、持っている知識や技術を最大限に活かし、素晴らしい成果を生み出すことができるのです。そして、これらの行動特性は、生まれ持った才能ではなく、訓練によって身につけることができます。日々の仕事の中で意識的に実践し、周りの人の行動を観察し、良い点を学ぶことで、着実に自分のものにしていくことができるのです。

社員の成長を促す評価制度

従業員の成長を後押しする評価制度は、会社にとって重要な仕組みです。この制度は、従業員が持つ能力や技術、知識、経験といった要素をしっかりと評価し、それぞれの長所と短所を明らかにするものです。

評価は、単なる成績をつけるためだけに行うのではありません。評価結果は、従業員一人ひとりの能力開発に役立てるだけでなく、適材適所の配置や昇進を判断するための材料としても使われます。つまり、従業員の成長を促し、会社全体の活性化を図るための重要なツールなのです。

この評価制度を導入するには、事前の準備や検証に時間と労力がかかります。評価の基準を明確にし、評価項目を具体的に設定する必要があります。また、評価を行う担当者の研修も必要です。しかし、適切に運用されれば、従業員にとって大きなメリットがあります。

まず、評価基準が明確になることで、従業員は自分の課題や長所を客観的に理解できるようになります。自分の現在地を把握することで、目指すべき方向が見えてきます。次に、自分に必要な能力を理解することで、自主的に学ぶ意欲が高まります。研修や勉強会に積極的に参加するようになり、自己啓発への意識が向上するでしょう。そして、効果的な能力開発につながり、結果的に会社全体の生産性向上に貢献するのです。

会社は、従業員の成長を支援する様々な機会を提供する必要があります。例えば、社内研修や外部研修、資格取得支援制度などを積極的に活用することで、従業員の能力開発を後押しすることができます。また、上司や先輩社員からの指導や助言も、従業員の成長にとって大きな力となります。定期的な面談などで、従業員の悩みや課題を共有し、具体的な解決策を一緒に考えることも重要です。

従業員一人ひとりの成長を促す評価制度は、会社全体の成長にもつながります。会社は、従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整備し、継続的な成長を支援していく必要があります。

能力開発の新たな視点

これまでの能力開発は、知識や技能を身につけることに主眼が置かれていました。まるで、道具箱に道具を詰め込むように、多くの知識や技能を詰め込むことが良しとされてきました。しかし、いくら立派な道具を揃えていても、それを適切に使いこなせなければ意味がありません。

近年、『コンピテンシー』という考え方が注目を集めています。コンピテンシーとは、知識や技能を効果的に使いこなすための行動特性のことを指します。つまり、どのような状況で、どのような行動をとれば良いのか、という実践的な能力のことです。これまでの能力開発のように、ただ知識や技能を学ぶだけではなく、それらをどのように仕事で活かすのか、どのような行動をとるべきなのかを学ぶことが重要になってきているのです。

例えば、問題解決能力を高めたいとします。従来のやり方では、問題解決の手法や理論を学ぶことに重点が置かれていました。しかし、コンピテンシーの考え方では、問題の原因を分析する力、様々な解決策を考える力、そして最適な解決策を選び実行する力など、具体的な行動を意識した訓練が必要となります。まるで、職人さんが道具の使い方を体で覚えるように、実践を通して能力を高めていくのです。

このように、コンピテンシー開発は、実践的な能力向上を目指す、より効果的な方法と言えます。知識や技能を学ぶだけでなく、それをどのように活かすかを学ぶことで、真に使える能力を身につけることができるのです。これからの時代は、変化の激しい時代です。変化に対応するためには、状況に合わせて適切な行動をとれる能力、つまりコンピテンシーが不可欠と言えるでしょう。コンピテンシー開発を通して、変化に強い、真に活躍できる人材を育成していくことが求められています。

組織全体の底上げ

社員一人ひとりの能力を高めることはもちろん、会社全体を強くするためには、会社全体で目指すべき姿、行動のあり方を共有することが重要です。そのためには、会社として求める能力を明確に示す「能力モデル」を、会社全体で共有し、活用することが効果的です。

この「能力モデル」を共有することで、社員全員が同じ方向を見て仕事に取り組むことができます。例えば、仕事を進める上での判断基準や、お客様への対応方法などを共有することで、社員同士の連携が強まり、結果として会社全体の仕事の効率が上がり、生産性の向上に繋がります。

また、「能力モデル」を活用することで、個々の社員の得意分野を見極め、それぞれの長所を活かせるようなチーム作りが可能になります。苦手な分野を補い合い、得意な分野で力を発揮できるチームは、高い成果を生み出すことができます。さらに、会社全体で不足している能力を明確にすることで、より効果的な社員教育の計画を立てることができます。例えば、会社全体でお客様対応力の向上が必要だと判断した場合、お客様対応に関する研修を実施することで、会社全体の接客水準を高めることができます。

このように、「能力モデル」に基づいた会社作りは、社員一人ひとりの成長を促すだけでなく、会社全体の力を高め、他社との競争に打ち勝つ力となるのです。社員の成長と会社の成長は、互いに影響し合い、高め合うものです。全員が同じ目標に向かって努力することで、会社はより大きく成長していくことができるでしょう。

これからの時代に必要な能力

近頃、世の中の変化はとても速く、今までと同じやり方では通用しない時代になっています。常に新しい技術や知識が登場し、社会の仕組みも大きく変わっていく中で、どのような状況にも対応できる力が必要とされています。この、変化に対応できる力を身につけるには、進んで学ぶ姿勢と、身につけた知識を活かして実際に行動する力が重要になります。

まず、進んで学ぶ姿勢とは、新しい情報や技術を積極的に取り入れようとする意欲のことです。世の中の変化を常に把握し、必要に応じて新たな知識や技能を習得していくことが大切です。たとえば、インターネットで最新の情報を調べたり、研修に参加して専門的な知識を深めたり、周囲の人から助言を求めるなど、様々な方法で学ぶことができます。学ぶ際に大切なのは、学んだことを実際に使ってみることです。新しい知識を仕事や日常生活で活用することで、より深く理解し、自分のものにすることができます。

次に、行動する力とは、学んだ知識や技術を活かして、実際に成果を生み出す力のことです。問題に直面した際に、どのように解決すればよいかを考え、自ら行動を起こすことが重要です。たとえば、新しい仕事のやり方を提案したり、チームをまとめながら目標達成に向けて努力したり、周囲の人と協力してより良い結果を生み出すなど、具体的な行動を通して成果をあげることが求められます。

さらに、世界中の人々と関わり合う機会が増えている現代において、異なる文化や考え方を理解し、円滑な意思疎通をはかることも重要です。相手の立場や気持ちを理解しようと努め、言葉だけでなく態度や表情にも気を配りながらコミュニケーションをとることで、良好な人間関係を築き、より良い成果を生み出すことに繋がります。

これらの能力を伸ばしていくことで、変化の激しい時代の中でも、柔軟に対応し、活躍できる人材へと成長していけるでしょう。そして、これらの能力を持った人材を育てることは、企業や社会全体の発展にも大きく貢献すると言えるでしょう。