
製造業における原価計算:総合原価計算とは
総合原価計算は、大量生産された製品の原価をまとめて計算する手法です。一つひとつの製品の原価を個別に計算するのではなく、一定期間内に製造されたすべての製品の原価を一括して計算します。このため、製品の種類が少ない企業や工程がシンプルな製品を製造する企業に向いています。
例えば、同じ規格のネジやボルト、ペットボトルのキャップなどを大量生産している工場を考えてみましょう。これらの製品は、形状や材料、製造工程がほぼ同一です。このような場合、一つひとつの製品の原価を計算するのは大変な手間になります。そこで、総合原価計算を用いることで、全体の材料費、人件費、製造経費などをまとめて計算し、生産量で割ることで、製品一つあたりの平均原価を簡単に算出できます。
総合原価計算は、計算の手間を大幅に省き、管理を容易にするという大きな利点があります。特に、製品の製造工程が複雑ではなく、製品の種類も少ない企業にとっては、非常に効率的な原価計算の方法と言えるでしょう。
一方で、製品の種類が多い場合や製造工程が複雑な製品には不向きです。異なる製品の原価をまとめて計算してしまうと、個々の製品の正確な原価を把握することが難しくなり、適切な価格設定ができなくなる可能性があります。また、製造工程が複雑な製品の場合、工程ごとに異なる原価が発生するため、単純に全体の原価を生産量で割るだけでは正確な原価を算出できません。このような場合は、個別原価計算と呼ばれる、製品ごとに原価を計算する手法を用いる方が適切です。
つまり、総合原価計算は、大量生産で、製品の種類が少なく、工程がシンプルな製品を製造する企業にとって、効率的で有効な原価計算の手法と言えるでしょう。