
歯科技工士:進化し続ける職人技の世界
歯科技工士は、歯科医師からの指示書に基づき、失った歯の代わりとなる入れ歯や差し歯、歯並びを美しく整える矯正装置、また顎(あご)の骨の欠損部分を補う人工骨など、様々な人工物(歯科技工物)を製作・修理する専門家です。歯科技工物の製作は、単なる物作りではありません。患者さん一人ひとりの口腔内の状態や噛み合わせ、そして審美的な観点まで考慮した精密な作業が求められます。
歯科技工士の仕事は、まず歯科医師から送られてきた型模型を基に、石膏模型を作製することから始まります。そして、その模型上でワックスを用いて歯の形を造形したり、金属を溶かして鋳造したり、陶材(セラミック)を焼き付けて色付けを行うなど、様々な技法を駆使して歯科技工物を製作していきます。この過程においては、高度な技術と知識はもちろんのこと、患者さんの生活の質を向上させるという強い使命感を持つことが不可欠です。
近年では、デジタル技術の進歩に伴い、3次元印刷機やコンピュータ支援設計・製造システムなどの最新技術を駆使した製作方法も取り入れられています。歯科技工士は、伝統的な職人技と最新技術を融合させながら、日々進化を続ける医療現場を支えています。
歯科技工物は、患者さんが健康と笑顔を取り戻すための重要な役割を果たしており、その製作に携わる歯科技工士の責任は重大です。緻密な作業を長時間続けなければならないため、高い集中力と根気が求められます。また、歯科医師との綿密な連携も欠かせません。指示内容を正確に理解し、患者さんにとって最適な技工物を提供するために、良好なコミュニケーション能力も必要不可欠です。患者さんの喜びが、歯科技工士のやりがいに繋がります。